軽トラをベースとしたキャンピングカーは、大きく分けて軽キャブコンと軽トラキャンの2種類が存在します。シェルの架装・脱着など違いはありますが、どちらも軽トラックをベースとしているため運転しやすく購入の敷居が低いのもメリットです。
ベース車両の種類こそ少ないものの、キャンピングカーらしい外観に仕上げられているのも魅力だといえるでしょう。「軽キャンバー」や「軽トラキャブコン」など呼称の違いも整理しつつ、軽トラベースのキャンピングカーの特徴やメリット・デメリットを確認してみましょう。
軽トラベースのキャンピングカーは大きく分けて2種類
一般社団法人日本RV協会のカテゴリーに合わせると、軽トラックをベースとしたキャンピングカーは、大きくシェルを架装するタイプのキャブコンと脱着式のトラックキャンパーに分けることができます。
- 軽トラキャブコン(軽キャンピングカー、軽キャンパーに含まれる)
- 軽トラキャン(トラックキャンパーに含まれる)
インターネット上や販売サイトでは、「軽トラキャンピングカー」「軽トラキャンパー」と一括りにされていることもあれば、「軽キャンパー」として他の軽車両とまとめられていることもあるため混乱してしまうかもしれません。まずは軽トラキャブコンと軽トラキャンの違いについて確認しておきましょう。
「軽キャンパー」に含まれるシェルを架装した軽トラキャブコン
軽キャンピングカーは大きく分けて、シェルを架装したキャブコンタイプと内装を中心に手を加えたバンコンタイプの2つが存在します。このうち、軽トラックをベースとしてシェルを架装するものは軽トラキャブコン(軽キャブコン)とも呼ばれます。
- 軽トラキャブコン(軽キャブコン):軽トラックをベースにシェルを架装
- 軽バンコン:軽自動車をベース車両として内装を中心にカスタマイズ
ハイエースなどをベース車両とする一般的なバンコンと比較すると車内空間に制限はあるものの、FRP素材やアルミ素材を用いたシェルは大人が立って歩けるほど広く断熱性にも優れているという特徴があります。ベース車両としてはダイハツの軽商用車であるハイゼットトラックなどが利用されます。
「トラックキャンパー(トラキャン)」はシェルを脱着できるのが特徴
トラックキャンパー(トラキャン)のうち、軽トラックをベースとしたものは軽トラキャン(軽トラックキャンパー)などと呼ばれます。軽トラキャブコンとは異なり、軽トラキャンはシェルが脱着可能になっているのが大きな特徴です。シェルの脱着は1人でもできるため、普段使いの軽トラックをそのまま利用できるというメリットがあります。
また、キャンピング用途のため装備は充実していますが、メーカーが手掛けたシェルは軽トラックに合わせた軽量化が施されているものも多くあります。軽トラックのパワーはピックアップトラックに劣りますが、シェルを積載した状態でも快適な走行性能と安全性を実現しているのも魅力です。
軽トラキャンパー・軽トラキャンピングカーのメリット・特徴
キャンピングカーのカテゴリーが異なる軽キャブコン・軽トラキャンは、シェルの架装や脱着などさまざまな違いがあります。ベース車両が同じで見た目が似ていても、厳密には別のキャンピングカーということになるのです。一方で、居住部分にシェルを利用しているなど少なからず共通点があるのも間違いありません。
他のカテゴリーやシェルを利用していないキャンピングカーと比較した際、軽キャブコン・軽トラキャンのメリット・特徴に似通った点も出てきます。軽キャブコン・軽トラキャンを「軽トラキャンパー・軽トラキャンピングカー」と総称し、他のカテゴリーとの違いを確認してみましょう。
車内の広さや取り回しに優れ1人~2人旅に適している
軽キャブコン・軽トラキャンはそれぞれシェルが脱着できるかという違いはありますが、いずれも車内に十分な広さを持ったモデルが多いのが特徴です。例えば以下は軽キャブコンとして知名度の高い「インディ727-S」の車体サイズです。
- 乗車定員(就寝):4名
- 全長:3,390ミリメートル
- 全幅:1,475ミリメートル
- 全高:1,990ミリメートル
車内は立って移動できる室内空間が確保されており、軽トラックとは思えないほど余裕を持って過ごせます。また、ベース車両として利用されているハイゼットトラックの最小回転半径は3.6メートルと小さく、取り回しにも優れています。
一方、軽トラキャンは軽キャブコンと比較すると居住空間が限定され乗車定員も少なくなります。しかし、脱着式のシェルは軽トラックの規格に収まる範囲で余裕を持ったスペースが確保されており、1人~2人なら快適に旅をおこなうことができます。
車両の種類の多さやシェルのカスタマイズ性も魅力
軽キャブコンのベース車両はOEM製品を除けばダイハツのハイゼットトラックかスズキのキャリイが中心で決して多いとはいえません。しかし、同じベース車両を使っていてもビルダーごとに異なるカスタマイズが施されています。断熱性などの機能面はもちろん、デザインにこだわって仕上がられた軽キャブコンは軽トラックをベースにしているとは思えないほど高級感があります。
一方の軽トラキャンはシェルを製造・販売する会社ごとに独自の強みを打ち出しているのが魅力です。シェルによっては電源が使用できる配線設備やエアコンの設置も可能ですし、断熱材などにこだわってキャブコン並みの快適性を実現させることもできます。ユーザー自身が内装を自由にカスタマイズできるのも、軽トラキャンの魅力だといえるでしょう。
購入価格がリーズナブルで維持費も比較的安い
軽キャブコン・軽トラキャンは他のカテゴリーのキャンピングカーと比較して購入価格が安いという特徴があります。軽キャブコンは軽バンコンより高めの設定となりますが、それでも新車価格は300万円~400万円程度となります。また、軽トラキャンは価格の幅がありますが、シェル単体で100万円以下から購入することも可能です。
日本国内で特に人気の高いバンコンは、ハイエースがベース車両なら400万円前後~650万円程度が一般的です。また、シェルを架装するキャブコンは500万円前後~1,000万円以上となります。特に人気のモデルなどは市場価値も高く、中古車であっても大きく価格が下がることも少ないはずです。軽キャブコン・軽トラキャンは他のカテゴリーと比較して購入しやすく、さらにベース車両が軽トラックとなるため税金や車検も安いのが魅力だといえます。
軽トラキャンパー・軽トラキャンピングカーの購入費用と維持費は安い
軽キャブコンはそのほとんどが軽自動車のサイズや排気量に収まるよう設計されています。また、軽トラキャンはシェルが脱着式となるため、税金や保険料などはベース車両に沿ったものとなります。軽キャブコン・軽トラキャンいずれも軽自動車と同じ維持費で運用できるのは大きなメリットです。
ただし、新車やシェルの購入価格はビルダーや装備内容によって異なりますし、用途によって年間の維持費も変わってくるはずです。人気モデルの新車・中古車価格などを参考に、軽トラキャンパー・軽トラキャンピングカーの購入費用と維持費を確認してみましょう。
新車・中古の購入価格は100万円~400代万円と幅広い
軽キャブコンの人気モデルの場合、新車の価格は300万円以上となるのが一般的です。しかし、中古車では人気モデルでも300万円以下となることも多く、年式が古くても問題ないなら100万円以下の軽キャブコンも販売されています。
軽トラキャンのシェルはサイズやオプションにもよりますが、新品でも50万円~100万円台から購入することが可能です。また、キャンパーシェルは中古市場にも多く出回っているため、ネットオークションなどを利用して安く入手することもできるでしょう。
ハイゼットトラックベース | 新車価格(税込) ※本体価格のみ |
中古車価格(税込) ※本体価格のみ |
J社 | 360万円 | 308万円~ (年式:2021年) |
T社 | 414万9,200円~ | 238万円~ (年式:2014年) |
I社 | 420万3,100円 | 169万8,000円~ (年式:2010年) |
B社 | 324万5,000円~ | 90万円~ (年式:2010年) |
5ナンバーの軽自動車と同じ程度の維持費で運用が可能
軽トラックをベースとした軽キャブコンは黄色の8ナンバー、軽トラキャンは4ナンバーとなるのが一般的です。8ナンバー・4ナンバーいずれも5ナンバーの軽自動車より軽自動車税が安く、さらに8ナンバーの場合は自賠責保険料も抑えられます。
※グリーン化特例、エコカー減税は除外(税込) | 4ナンバー (四輪貨物自家用) |
5ナンバー (黄色5ナンバー、軽自動車) |
8ナンバー (黄色8ナンバー、特殊用途自動車) |
軽自動車税 | 5,000円 | 1万800円 | 5,000円 |
自賠責保険料(24か月) ※令和5年4月1日以降 |
2万340円 | 1万7,540円 | 1万1,290円 |
自動車重量税(2年) | 6,600円(エコカー以外、13年未満) |
- 自動車税(総排気量1000cc以下):2万5,000円(グリーン化特例は除外)
- 自賠責保険料(24か月):1万7,650円
- 自動車重量税(1トン以下/2年自家用):1万6,400円(エコカー以外、13年未満)
また、排気量だけで見れば軽自動車に近い上記のコンパクトカー (白5ナンバー)の例と比較しても、8ナンバー・4ナンバーの方がお得であることがわかります。実際には任意保険料や車検費用、メンテナンスや燃料費なども含める必要がありますが、5ナンバーの軽自動車と同じ程度の維持費でも運用ができるはずです。
軽トラキャンパー・軽トラキャンピングカーのデメリット・注意点
他のカテゴリーと比較すると価格の安い軽キャブコンですが、シェルを架装しているため軽キャンピングカーとしては車体価格が上がる傾向があります。なるべく安く軽キャンピングカーを入手したいという方なら、軽キャブコンより軽バンコンの方が適している可能性もあります。
一方の軽トラキャンは価格こそ安いものの、車内スペースや乗車定員、積載量などに制限があるというデメリットがあります。軽キャブコン・軽トラキャンのデメリット・注意点をまとめて確認してみましょう。
同じ軽キャンパーの「軽バンコン」より価格は高め
「軽キャンピングカー」というカテゴリーで見ると、シェルを架装した軽キャブコンの価格は軽バンコンより高くなる傾向があります。軽バンコンはボディに手を加えないものも多く、価格は200万円前後~300万円程度が中心となります。モデルによって価格は異なりますが、軽キャブコンと軽バンコンでは100万円程度の価格差があるのが一般的です。
また、等級や車両価格によっては任意保険料が高くなる可能性もありますし、8ナンバー登録でキャンプ用の装備を充実させている場合は、メンテナンス費用も嵩む可能性があります。総合的な維持費は軽自動車と大きく変わりませんが、各種保険料はもちろんガソリン代や車検代なども含めて維持費を計算しておく必要があります。なお8ナンバー車両の任意保険加入に対応していない会社もあるため、事前に確認しておくのがおすすめです。
車内スペースや乗車定員、積載量などに制限がある
シェルを架装し広い室内空間を持つ軽キャブコンですが、全体的なサイズはあくまで軽自動車の規格に収められています。
- 全長3.4メートル以下
- 全幅:1.48メートル以下
- 全高:2.0メートル以下
基本的に乗車定員は4名となるものの、2名以上で長期間の旅行をするなら快適に過ごすのは難しいかもしれません。また、軽トラキャンはシェルが荷物扱いとなるため、走行中の乗車定員はベース車両に準じた2名までとなります。さらに頻繁に取り外す場合はシェルの置き場も必要ですし、荷物扱いとなるためベース車両の最大積載量にも気を配る必要があります。軽トラックベースなので乗り心地やパワーにも難があるため、利用する人数や使い方を事前に確認しておく必要があります。
軽トラベースのキャンピングカーは扱いやすく初心者にもおすすめ
軽トラベースのキャンピングカーは、シェルを架装した「軽キャブコン」とシェル脱着式の「軽トラキャン」に分けることができます。軽キャブコンと軽トラキャンは、購入価格はもちろん車内スペースや乗車定員などにも違いがあります。
ただし、どちらもベース車両として軽トラックを使用していることもあり、取り回しに優れキャンピンカー初心者でも扱いやすいのが魅力です。税金などの維持費にも優れているので、1~2人旅向けの1台として検討してみてはいかがでしょう。